太陽熱の高効率利用に向けた遷移金属窒化物ナノ構造による光熱交換

石井智
(国立研究開発法人物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究員)

2015年2月23日月曜日

なぜ光学でナノ構造?

またご無沙汰してしまいました。今年度が終わる前にいくつか研究に関するコラムを書いていきたいと思います。

私の専門はナノ光学という分野で、平たく表現すると光を数十ナノメールの構造に当て、そこで起こる現象を研究しています。ナノ構造をデザインすることによって光をナノスケールの空間に閉じ込め、その結果光の散乱を数百倍に増強したり、回折限界を超えるレンズに応用したり、その他数多くの応用が考えられています。また、平行してナノ光学の基礎的な理論の構築、ナノ構造の計算手法や作製手法の開発も進んでいます。

そこで、初回はそもそもなぜ光学でナノスケールを扱うのかについて、私見を含めて説明していきたいと思います。光というと可視光から近赤外光までの電磁波を含む場合が多いですが、ここでは話を簡単にするために可視光を考えます。人によって定義に差はありますが、可視光の波長はおよそ400nmから800nmなので、代表値を500nm(0.5um)としましょう。500nmにとって、25nmの構造は1/20の大きさしかなく十分に小さいと言えます。

さて、25nmの構造がガラスなどの誘電体でできていると誘電率が正のため、通常光とは強く作用せず、光は誘電体ナノ構造をほとんど「感じず」に伝播していきます。他方、金属でできた25nmの構造では状況が異なってきます。光がこの金属ナノ構造に当たると、金属中の自由電子が光の電場によって振動します。同時にアンテナのように光を集める働きをします。その結果、光の波長より小さな金属ナノ構造は強い共鳴を起こし、これが表面プラズモン共鳴と呼ばれるものです。この性質をうまく生かすことで、前述のような応用ができるのです。


ナノ構造を作製する方法はいくつもありますが、その一つが大塚さんのブログに登場した電子線描画装置による電子線リフォグラフィーです。我々のところでも電子線リフォグラフィーをよく使いますが、ナノ球リソグラフィーという化学的な手法も使っています。(この論文ではZnOのパターニングをしていますが、金属にも適応できます)


短めですが、今回はこの辺で。


2 件のコメント:

  1. 石井さん
    説明うまいですね。。私は典型的な文系なのですが、なんかわかったような気になりました。本当のところは、解っていないのですが。。でも、そういう事って大切だと思います。
    特に、中学生ぐらいの年代の人たちにそのような形で興味を持ってもらい、科学の世界にいざなう事は「やさしい科学技術セミナー」の狙いです。
    今年度は、無理でも来年度でも、その次でもいいですから、セミナーやってみませんか?きっと良いセミナーになるのではないか?と思います。

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    1. >中原様
      ありがとうございます!しかし私の文章力はまだまだなので、これからも読み手を意識して書くことを心がけたいと思っています。
      またセミナーのお話をいただきありがとうございます。今年度は難しいですが、来年度改めてご相談させていただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

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