太陽熱の高効率利用に向けた遷移金属窒化物ナノ構造による光熱交換

石井智
(国立研究開発法人物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究員)

2017年10月19日木曜日

American Institute of Physicsからのプレスリリース

光熱変換というキーワードで行っている本助成以外の研究のうち、当機構の内田GLらとの共同研究がAPL Photonicsという雑誌に掲載されました。内田さんを始め共同研究者と一緒に研究ができたことの賜物で、感謝しています。
そして、この雑誌の出版社であるAmerican Institute of Physics (AIP)が我々の論文をAIPからプレスリリースしてくださいました。プラズモン共鳴によって波長選択的に光を熱に変換し、それによってスピン流を発生させた報告ですが、研究の途中で想定外の現象が見つかり今後それを解明していきたいと思っています。
論文はこちら:
"Wavelength-selective spin-current generator using infrared plasmonic metamaterials", APL Photonics 2, 106103 (2017)

2017年10月10日火曜日

8月と9月の学会

今、ICFNN-2017というネパールのカトマンズで開催される国際学会に向かう途中で、香港で乗り継ぎ待ちをしています。この学会のことは終わってから報告することにして、この夏に参加した学会について記しておきたいと思います。

8月は、SPIE Optics + Photonicsというアメリカのサンディエゴで行われた学会に参加しました。この学会はアメリカで開催される光学系の学会では最大規模のもので、毎年数千人が参加します。この学会で講演するのは5年ぶり。当時はPhDを取得した直後で、招待講演だったのですが、指導教員の代わりの講演でした。今年は、私自身の招待講演として講演を行いました。本学会で招待講演に選んでもらえたことは素直にうれしく、また5年前を振り返ると少し感慨深いものがあります。発表した内容は、本助成をいただいて行っている遷移金属窒化物ナノ構造を用いた光熱変換に関することと、同じ材料を使った光電変換の研究の両方です。なお、応用物理学会の会員限定ではありますが、講演概要は今年の応用物理4月号に掲載されている内容と一緒です。

9月は、福岡で開催された秋の応用物理学会学術講演会に参加しました。春の講演を講演奨励賞に選んでいただいたおかげで、ここでも招待講演をさせていただきました。内容は窒化チタンナノ構造を使った光電変換についてで、可視光触媒への応用の可能性を示しました。会場がほぼ満席になるくらい多くの方に聞いていただけて、われわれの研究を紹介するとても良い機会になりました。

今月は先のICFNNに加えてISSS-8という学会に参加予定です。

2017年6月8日木曜日

コメントが"Chemistry World"に掲載されました。

本研究助成ではナノ構造を使った高効率な光熱変換を対象としていますが、先日別のグループが行った光熱変換の研究論文について意見を求められ、それがChemistry WorldというRoyal Society of Chemistry (RSC)が出版しているウェブマガジンに掲載されました。

掲載された記事はこちら、コメントしたのは以下の論文です:

Accessible Graphene Aerogel for Efficiently Harvesting Solar Energy

Yang Fu, Gang Wang, Tao Mei, Jinhua Li, Jianying Wang, and Xianbao Wang
ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2017 5 (6), 4665-4671
DOI: 10.1021/acssuschemeng.6b03207                                

なお昨年の12月に、MRS Bulletinから今回のようにコメントを求められて記事になったものはこちらです。



2017年6月6日火曜日

台湾

先月下旬、台湾へ。SPP8というナノ光学の分野では名の通った学会に参加するのが目的でしたが、その前に研究室の先輩のいる国立交通大学台南キャンパスへ。数年前は二人ともアメリカに留学していて、こうして研究者となって再会することは想像していませんでした。実験室などを案内してもらいましたが、設備は充実していい論文が書けることに納得。
その後、学会が行われる台北へ。ここではPhDのアドバイザーや研究室の別の先輩達に会いました。お世話になった方々に一度に会うことができて、改めて学会は貴重だと思いました。肝心の発表は、アドバイザーの先生が会場にいらしたため学生のころのように緊張しましたが、無事に終了。
とても充実した台湾での1週間でした。

2017年4月21日金曜日

NIMS一般公開2017(4月23日)

物質・材料研究機構(NIMS)の石井です。3年ぶりに国際科学技術財団の研究助成にご採択いただき、ブログを再開いたします。

直前のご案内となり恐縮ですが、今度の日曜日(23日)は当機構の一般公開です。

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日時:4月23日(日)
場所:茨城県つくば市 物質・材料研究機構 千現・並木・桜地区

超伝導、超鉄鋼、超耐熱、超強力磁石…
驚異の性能を持つ材料たち。
超精密、超高圧、超長時間でおこなう究極の実験。
その数、過去最大級の71施設!
あわせて、日本刀と最新鉄鋼技術の意外な共通点、AI(人工知能)にまつわる特別講演、毎年大人気のものづくり体験プログラム。さらには、YouTubeで人気沸騰中の科学映像で使った実物装置の特別展やど迫力の見学ツアーなど、ますますパワーアップした企画ばかりです。
入場・体験ともに無料。お土産がもらえるプログラムもあります。
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都内からですと、つくばまではつくばエクスプレスで約1時間。お時間がございましたらぜひお越しください。





2015年2月23日月曜日

1,2月

続けて、近況報告を記します。

1月は、まず24日にプラズモニクス研究会で米国Purdue大学の共同研究者と行っている光導波路の研究成果を発表してきました。また月末に行われたnano techでは、所属研究グループの主要テーマの一つであるプラズモニクスを用いた光熱変換についてポスター展示を行いました。予想外に企業の方々に関心を持っていただけたのが新鮮でした。

そして、今月はコニカミノルタ科学技術振興財団からコニカミノルタ画像科学奨励賞の優秀賞決定のご連絡をいただきました。受賞テーマは極薄平面レンズの開発で、研究の一部は香川大学の山口先生との共同研究です。授賞式は来月行われます。財団の方々には我々の研究を評価していただいたことに感謝しております。ありがとうございました

なぜ光学でナノ構造?

またご無沙汰してしまいました。今年度が終わる前にいくつか研究に関するコラムを書いていきたいと思います。

私の専門はナノ光学という分野で、平たく表現すると光を数十ナノメールの構造に当て、そこで起こる現象を研究しています。ナノ構造をデザインすることによって光をナノスケールの空間に閉じ込め、その結果光の散乱を数百倍に増強したり、回折限界を超えるレンズに応用したり、その他数多くの応用が考えられています。また、平行してナノ光学の基礎的な理論の構築、ナノ構造の計算手法や作製手法の開発も進んでいます。

そこで、初回はそもそもなぜ光学でナノスケールを扱うのかについて、私見を含めて説明していきたいと思います。光というと可視光から近赤外光までの電磁波を含む場合が多いですが、ここでは話を簡単にするために可視光を考えます。人によって定義に差はありますが、可視光の波長はおよそ400nmから800nmなので、代表値を500nm(0.5um)としましょう。500nmにとって、25nmの構造は1/20の大きさしかなく十分に小さいと言えます。

さて、25nmの構造がガラスなどの誘電体でできていると誘電率が正のため、通常光とは強く作用せず、光は誘電体ナノ構造をほとんど「感じず」に伝播していきます。他方、金属でできた25nmの構造では状況が異なってきます。光がこの金属ナノ構造に当たると、金属中の自由電子が光の電場によって振動します。同時にアンテナのように光を集める働きをします。その結果、光の波長より小さな金属ナノ構造は強い共鳴を起こし、これが表面プラズモン共鳴と呼ばれるものです。この性質をうまく生かすことで、前述のような応用ができるのです。


ナノ構造を作製する方法はいくつもありますが、その一つが大塚さんのブログに登場した電子線描画装置による電子線リフォグラフィーです。我々のところでも電子線リフォグラフィーをよく使いますが、ナノ球リソグラフィーという化学的な手法も使っています。(この論文ではZnOのパターニングをしていますが、金属にも適応できます)


短めですが、今回はこの辺で。